Pediatric Dermatology小児皮ふ科
乳児湿疹(Infantile eczema)
乳児湿疹とは、乳児期のお子さんによく見られる湿疹の総称です。1歳ごろまでは皮膚が薄く、皮脂の分泌も不安定になり肌のバリア機能が不十分なため、顔や首、手首などこすれやすいところに湿疹が出やすくなっています。ほとんどの場合、患部を清潔にして保湿をすることで自然と症状は治りますが、なかなか治らない場合や症状がひどい場合は、一度ご来院ください。
乳児湿疹には、新生児にきび、乳児脂漏性湿疹、あせもなど大きく分けて 3 種類 があります。
新生児にきび
生後1週間から1カ月の間によく見られる症状です。思春期のにきびと同じように赤いぶつぶつや白いぶつぶつがおでこやほっぺに現れます。これは、母親からのアンドロゲンというホルモンの影響で皮脂の分泌が多くなり、毛穴に皮脂が詰まることで起きます。生後2〜4カ月ごろになるとホルモンバランスが落ち着いてくるので、清潔な状態にしておけば徐々に症状は治ります。
乳児脂漏性湿疹
顔面や頭部に黄味がかったカサブタやフケのようなものが出てくる症状です。かゆみや痛みはありません。新生児にきびと同様に、母親からのアンドロゲンというホルモンの影響で皮脂が多く分泌され、毛穴に溜まることが主な原因とされています。また、成人の脂漏性湿疹と同様に、皮脂を好む「マラセチア」という皮膚に常在する真菌が原因とも言われています。処置としては、まず脂漏を石鹸やシャンプーで洗い流します。その後、ワセリンや亜鉛華軟膏という外用薬や、赤みが強ければ一時的に弱いステロイドを塗ることもあります。
あせも
赤ちゃんは単位面積あたりの汗腺の数は成人と変わらないため、大人に比べて汗をかきやすく肌もデリケートです。そのため、汗腺(汗の出口)に汗の成分や汚れが溜まり、皮膚にプツプツが出来たりかゆみが出やすくなっています。ひじや膝の裏側、寝具やベビーカーのクッションで圧迫される部分、おむつに覆われて蒸れやすい部分などによく見られます。
じんましん(Urticaria)
じんましんは、ボコボコとしたみみず腫れのような赤い膨らみが見られる症状で、多くの場合かゆみをともないます。通常では数時間〜1日程度で症状が治ります。
じんましんの多くは、肥満細胞という細胞からヒスタミンという物質が放出されることで症状が現れます。そのため、抗ヒスタミン薬または抗ヒスタミン作用のあるアレルギー薬を内服、注射することで症状をおさえます。
アレルギー性と非アレルギー性
じんましんの主な原因として、アレルギー性のものと非アレルギー性のものがあります。 アレルギー性には、ダニやほこり、花粉、食べ物などアレルゲンとなる物質に接触したり食べたりすることで起こります。非アレルギー性では、こすれや圧迫などの物理的刺激、日光や気温などの環境要因、ストレスなどが原因となります。
症状が出たときは
じんましんの症状が出ると強いかゆみを感じます。その場合は患部を冷やすと症状が落ち着きます。ただし、寒冷刺激によって起こるじんましんの場合は冷やしたり暖めたりしないようにしてください。じんましんの治療には、抗ヒスタミン薬または抗ヒスタミン作用のあるアレルギー薬を使用することが最も効果的です。早めに症状を落ち着かせることで、心理的ストレスを軽減し、かき壊しも防ぐことができます。飲み薬で症状が治まらない場合には、抗ヒスタミン薬を変更したり倍量投与したりすること、またガイドラインに記載のあるH2ブロッカーの内服などが有効なことがあります。
みずぼうそう(Varicella)
みずぼうそうとは、「水痘・帯状疱疹ウイルス」というウイルスに初めて感染することで発症する感染症です。1歳〜4歳のお子様に発症することが多く、10歳までにはほとんどのお子様に発症すると言われています。
子どもの頃に一度発症すると生涯に渡って免疫を獲得できますが、症状が治っても体内のウイルスは消滅することはなく、大人になり免疫力が下がると帯状疱疹として発症する場合があります。
みずぼうそうの症状
発熱とかゆみの伴う発疹が全身に現れます。感染してから2週間前後の潜伏期間をへて発症します。
発症初期には小さな赤い発疹が胸やお腹、背中に現れ、その後手足に広がっていきます。かゆみが数日続き、7〜10日ほどで発疹が黒っぽいかさぶたになっていきます。感染力が強いウイルスであり、飛沫感染や接触感染、空気感染もするので、発症している間は家から出ないようにしましょう。水疱がすべてかさぶたになったら集団生活に戻れます。
みずぼうそうの予防と治療
みずぼうそうの予防にはワクチン接種が一番有効です。みずぼうそうのワクチンは定期接種に含まれていますので、お子様が1歳になったらワクチン接種を受けましょう。ワクチン接種することで、大人になった時に帯状疱疹にかかりにくくなったり、発症しても軽症でおさまる場合がほとんどです。治療には外用薬や内服薬を使用します。みずぼうそうは二種の感染症に位置付けられ、すべての発疹がかさぶたになるまでは登校を避ける必要があります。
ウイルスの増殖をおさえる
- アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルなどの抗ウイルス薬の内服
- 患部に化膿がある場合は抗生物質の内服
- 症状が軽症であれば、抗ウイルス薬を使用せず対症療法による治療を行う場合もあります。
かゆみ、発熱をおさえる
- 抗ヒスタミン剤(かゆみ止め)の内服
- 解熱剤の内服